「30年も前から私は、この魂を揺さぶる小説が書きたかった」 
著者の出口汪氏は、東進衛星放送スクールはじめ、 
予備校のカリスマ現代文講師であり、 
神霊世界の巨人と言われた宗教家・出口王仁三郎の曾孫でもあります。 
“カリスマ講師の処女小説”という話題性だけでなく、 
設定やストーリーなど、その世界観にも引き込まれる大作です。 
 
30年前から著者の頭の中に構想があったというこの小説は、 
人間の中にある「想念の世界」を通じ、 
母と娘、父と息子、生と死、肉体と想念、憎悪と情愛、 
残忍とやさしさなどを、清冽かつ妖艶なタッチで描き出しています。 .
 
[あらすじ] 
子どものころに父を亡くした主人公の洋(よう)は、大学で、 
美しく不思議な透明感を持つ女性、水月(みづき)と出会う。 
記憶をたどれば、洋と水月は、幼い頃からくり返し見る 
「火の山」の夢の中で、何度も出会っていたことに気づいた。 
夢の中の少女と、現実に出会った水月。 
そして、自分の存在を明らかにするため、 
謎を解こうとする洋の前に現れる、 
水月とそっくりな女、百合(ゆり)と絵夢(えむ)……。 
 
「僕の腕の中には、意識を失ったような、青白い表情の水月がいた。長い黒髪がば 
さりと垂れ、それが怪しい色気を醸し出していた。僕はもう一度強く抱きしめた。 
でも、どんなに抱き合っても、二人は一つになれないのではないか。僕は水月の体 
の透明さに改めて驚いた」 
 
「天上の月は水面に映って水月となる。天に昇ることは、すべてが上下に逆転する 
水面において、それはそのまま水の底に沈むことになる(中略)この世で幸せを得 
ることが不可能なら、水の底に沈むしか手だてがないではないか」 (本文より) 
 
[著者プロフィール] 
出口 汪(でぐち・ひろし) 
1955年東京生まれ。関西学院大学日本文学研究科博士課程修了。現在は東進衛 
星予備校講師、大学受験予備校S.P.S主宰、出版社水王舎社長。勘とセンスで解く 
主観的な受験現代文の世界に「論理」を導入し、客観性と正確な妥当性をもたら 
した「出口の現代文」は、受験生から絶大な信頼を得ている。「現代文実況中継」 
「システム現代文」シリーズなど、書き下ろす受験参考書はどれもベストセラー、 
『「論理エンジン」が学力を劇的に伸ばす』などビジネス書の著書もあるが、こ 
の『水月』が初の小説、遅咲きの大型新人作家のデビュー作となる。 
 
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